鳴門十二勝景図巻(なると じゅうに しょうけいずかん)
最終更新日:2019年5月29日
大毛山望鳴門
裸嶼望門先
北泊
阿波井祠前望堂浦、鍋島
岡嵜望女夫岩、大磯崎
裸嶼望大毛山、土佐泊
鳴門東岸、鳴門北面
鳴門中流
絹本著色 29.6×860.5 寛政8年(1796)
鈴木芙蓉は、寛政8年(1796)に徳島藩の御用絵師となり、11代藩主蜂須賀治昭の参勤交代に従って阿波に入国している。本作品は、巻末の款記に「寛政丙辰冬十二月、恭奉/厳命冩阿州画員臣木雍」とあるように、この入国の折に藩主の命を受けて阿波第一の名所、鳴門の勝景を12場面描いたもので、図の寸法が2種類あり、横幅の広い画様と横幅の狭い画様が交互に繰り返す構成となっている。広い方に荒々しい外海を、狭い方に穏やかな内海を描いており、まったく違った鳴門の表情を見て取ることができよう。藩主の命令か、画巻形式を意識して、その特性をうまく活かして筆を揮ったと思われ、また絵巻物を想起して描いていると思われる。その意味で、芙蓉の真景図として個性的な存在といえよう。
また、芙蓉が藩主から直接命を受けて描いた図として、貴重な作例であり、文晁が庇護者であった松平定信から「公余探勝図」などの制作を命じられたように、当時の御用絵師は真景図を描くことは当然身に付けるべき技術のひとつであったのである。
なお、巻頭には最後の藩主で、近代に活躍した侯爵蜂須賀茂韶の書が付されており、明治以降に装丁し直された可能性が指摘できる。
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