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おわりに

最終更新日:2016年4月1日

 徳島大学大学院工学研究科 教授 村上仁士

 次の南海地震は今世紀半ばまでには起き、地震の規模は昭和南海地震のマグニチュードM8.0よりも大きい江戸時代に起きた安政南海地震M8.4級ということが次第にわかってきた。次の大地震に備えた防災対策が急務である。
 地震防災対策の手順は、まず(1)「地震とは何か?」を知る。次に(2)自分達のまちで起きた過去の地震・津波災害の実態を知り、自分達のまちの弱点を知る。さらに(3)次の地震に対する被害予測を行う。そして(4)行政・住民それぞれが予測される事態に対応できる防災対策を速やかに実行する。そのためにも、行政は(1)から(4)に関する情報を住民に提供し、各地域の住民各自が自分達はここまではできるという意識をもち、不足する部分については行政と協働できる体制を整えることが必要である。
 これまで昭和南海地震の詳しい被災記録は、県南の一部の地域に限られ、県都徳島市での体験者の証言をまとめた記録はなく、被害の実像がよくわからなかった。
 本証言を聞き、現徳島市内で昭和南海地震を体験された方々の生の声に、私の頭に被災像が次第に鮮明に見えてくる。そして、これを読まれた皆様方にも被災のイメージを描いていただき、これらの有益な証言をもとに、次のようなことを考えていただきたい。

 1. 徳島市は空襲による多くの家屋が焼失したため、これまでこの地震による家屋被害の実態がわからなかった。証言による揺れの様相から震度分布がわかってくるが、本書からまず各自の地域の揺れを知り、次の地震はそれよりも大きいという前提で家屋の耐震性とその対策を考えておく。
 2. 徳島市で液状化が起きた地域がわかり、もし各自の住居が都市化に伴い埋立て造成地にある場合には、地震に対する弱点があることを知り、その対策を考えておく。
 3. 徳島市内河川に津波が来襲し、大きな津波でなくても、海底が見えるほど干上がるように引き、また材木や船が巨大な衝突物と化して岸壁や橋桁に襲いかかった事実があった。現在、多くの船が河川内に係留されているが、こうした船の係留綱が切断されるとそれが凶器となり2次災害を起こす可能性があることを知っておく。
 4. 当時と現在では土地利用、地形、堤防などの防災施設の整備状況は大きく異なっており、次の地震時に同じような被害が起きるわけではない。社会が高度化した現在の方がむしろ家屋倒壊、がけ崩れ、火災などによる人的・物的被害の危険度は大きくなっていると考えておいた方がよい。

 最後に、地震災害のようにめったに起きない悲惨な災害であっても発生後数年で忘れ去られることが多い。本書は、災害文化を継承する貴重な資料として小学校、中学校、自主防災組織などの防災教育・防災学習の副読本に活用してほしいと思う。
 時宜を得た本書を計画された徳島市および有用な証言をされた方々に敬意を表するとともに、願わくば、災害に強いまちづくりを目指す各市町村でこうした証言集が作られることを望みたい。

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